マクと旅人

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「君の名前はなんと言うんだい」 おじさんに言われて僕は答える 「僕はマクゴナガル。みんなにはマクって呼ばれてる。」 「そうか、マクゴナガル。よろしくな。マック。」 「ああ、よろしく。マックってなんだ、変な呼び方だな。」 僕はマスターからビアルを慎重に受け取ると、目をつぶって煽るように飲む。 「おお、おお。やっぱりいい飲みっぷりだな。」 そう言っておじさんはニヤリと口角を上げ、 僕の事を見ながら、自分のグラスを持ち上げてひと口飲む。 茶色く濁ったお酒、ウイスキーだった。 ビアルに夢中だった僕はおじさんの視線に気づいて、少し恥ずかしくなった。 ジョッキから口を離した僕は話題を振る。 「おじさんの名前は?」 僕が聞くとおじさんは意地悪そうに答えた 「秘密だ。」 「なに!先に名前を聞いといて自分は名乗らないのかあなたは。恥ずかしくないのか。」 「ああ、そうだ。悪いか。どうせ呼び方なんてなんでもいいだろう。そんなに重要なことじゃあない。 ああ、そうだ。ナイスガイと呼んでくれればいい。」 「……断る。」 確かにおじさんは、顔はかっこいいし、髭も整えられていて綺麗だ。 身体はがっちりしている。 でも服が使い古した服だ。風避けのフードが着いてはいるが、どことなく小汚い。 それに僕は自分のことをナイスガイと言わそうとするナイスガイは見たことが無かった。 断られておじさんはガハハと笑っていた。 僕はそれを見ながら答える。 「名乗らないって言うんなら。じゃあおじさんはおじさんだ。」 「せめてお兄さんはどうだ。」 「いや。おじさんはおじさんだよ。髭もあるし。大人だ。」 「けっ。しょうがねえなぁ!俺が名乗らないとこもある。許そう。」 おじさん大袈裟に言って、腕を組んで頷いた。 なんだかこの人おっきい子供みたいだ。 でも良い方に子供っぽい。馴染みやすさがあって、優しさが感じられた。 「へぇー。マックはこの酒場で働いているのか。物好きだな。」 おじさんは酒場を見渡す。そこには騒ぎ立てる、憎い飲んだくれ達と、せっせと働くウェイトレス。 「俺だったら即辞めてる。酒臭い男の相手はどうも好かん。」 「おじさんも例外ではないよね。」 酒臭い男と聞いて、ちらりとおじさんを見る。 「俺は別だよ。君に迷惑かけていない。」 おじさんの目にセクシーなウェイトレスが映る。 またおじさんは意地悪そうにニヤけた。 「まさか恋か。」 「いやまさか!そんなはずがないでしょ!」 僕は慌てて首を振る。実際、おはようとお疲れ様でした。しか喋らないし。僕とは無縁だ。 「本当かな?怪しいぞ?このやろー。」 おじさんは僕の肩をツンと肘で小突く 「……おじさんは?なんの仕事してるの?」 僕は話題をすり替えた。 おじさんはうーんとしばらく考えて、マクへ答える 「俺は仕事はしていない。北へ向かっている途中でこの街に寄っただけだよ。」 そういいながらおじさんは、口元でグラスを傾ける。 「北って隣町の?」 「いいや、もっともっとずっーと北の方さ。北の海が見えるまで。」 僕は一瞬理解出来なかった。 おじさん行商人でもなさそうだし。 だが、理解できた時僕は目を丸くして驚く。 「それって旅人ってこと?」
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