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次の日の朝。
まだ空がオレンジ色の時間に、
旅人は腰に袋をたずさえ、部屋を出た。
宿の受付のおばちゃんに声をかける。
「やー、お姉さん。数日間ありがとう。とても気持ちよく休めたよ。」
「あらヤダ、お姉さんだなんて!ケガはもう治ったのかい?」
「ああ、治ったよ。これもこの宿のおかげだ。ありがとう。」
「本当にそうなのかい?なんか浮かない顔してるね。」
「あら……お姉さん鋭いね!でも傷の方は大丈夫!ほらみるかい?」
おじさんはそう言って傷跡の着いた割れた腹筋をおばちゃんにみせた。
「あらヤダもう!!分かったから早くしまいなさい!」
ハハハと笑いながら、ドア付いたベルをカランコロンと鳴らし、
宿を出たおじさんは、そのまま町の出口へ向かう。
町の衛兵に手をあげて挨拶をして門をくぐって旅人は驚いた。
そこには1人の少年がいたのだ。
「……ん、マック来てたのか。送迎かな。ありがとう」
「何言ってるのおじさん。僕も一緒に行くんだよ。」
「……!」
ピクリと一瞬おじさんの動きが止まったが、途端にゆっくり
フフフと笑い始めた。
「君は面白いな。私は先を急ぐ。ではな。」
そう言っておじさんはスタスタ北へ歩いていく。
マクはその後を追った。
おじさんは歩きながら、顔をこちらへ向けずにマクに言う。
「ちなみに私は『来なさい』と言ってないからな。死んでも知らんぞぉ?」
マクはおじさんの背中をまっすぐ見て言った
「僕は、『無理やりついてきた少年』だ。だからもし死んでもおじさんのせいじゃない。勝手に来て勝手に死んだ男だ。だから、気にしなくていい。僕も死んだ時おじさんの事は責めない。」
おじさんは前を向きながらもニヤリと微笑むと、2人は並木道を北へぐんぐんと進んでいくのであった。
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