9人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「本当に!?いいのか!?」
「ああ!!いいとも。でも食べるのは半分こだ」
「半分も食えるんだったら幸せだよ。ありがとう。カムス」
僕はまさか酒を飲みながら魚が食えるとは思わなかった。
カムスは本当に魚を頼んで、ビアルと魚は一緒に来た。
塩で焼いた身がふわっふわの魚だ。
そして隣にある冷えたビアル。最高のコンビ。
「カムス君。君は恩人だ。ありがとう。」
「いいんだよ。大袈裟だなあ。俺も半分食うんだから。」
この街の魚は最高だった。大きい方をくれたカムスも最高だった。
「はあー……やっと今僕は旅に出て良かったと思ったよ。」
それを聞いてカムスは笑う。
「でも酒が美味いって、前働いてた時と一緒の喜びだと思うけど。」
僕は確かにそうだと笑った。
「実は俺も旅をしてるんだ。」
カムスはそう恥ずかしそうに言った。
「そうなのか!?もっと早くいいなよ。」
「君の話が面白かったから腰を折りたく無かったんだよ。」
確かに一方的に喋りすぎてたかもなと、僕は反省した。
「いやいいんだ。僕も北へ向かって旅をしてるんだ。北に向かってね。薬を売って歩いているんだ。」
マクは少しだけギョッとした
「薬って何の薬だよ。」
カムスは疑われているのにやっと気づいて、否定をする。
「違う違う、そういう薬じゃないさ。胃薬だよ。ぼくんちの庭に胃に効く植物や果実をいっぱい作ってるのさ。たくさん出来上がった物を加工して、こうやって毎年ここら辺で売ってる。」
「そうなのか。」
高値で僕に危険な薬物を売るのかと思ったけど違うみたいだ。
「でも今年は全く売れなくてね。こうしてやけ酒に来たんだよ。」
グイグイとビアルを飲むカムス。僕はちょっと手伝ってやりたいと思った。
「僕も売るの手伝おうか。疲れてるからたくさんは出来ないけど。」
そういうとカムスは首を横に振った。
「いいんだ。マク。ありがとう。」
「……本当か?」
「ああ。大丈夫だ。さっき他にいい商売をさっき見つけたんだ。」
「え?さっき?」
カムスは「うん」と言って後ろを向き、反対側のカウンター席を指さした。
「さっきあそこの方で飲んでたんだけど、おっさんたちがヒソヒソ話をしていたんだ。」
カムスは周囲に誰もいない事を確認すると、マクの耳を借りる。
「『宝の洞窟を見つけた。宝の箱は開けられず持ち運べず、まだ置いたままだ。箱には暗号が書かれていて、理解できない。だから信頼のできる頭の良い奴を探している。』そう言ってた。」
僕はちょっとドキドキした。
「きっと奴らは盗賊に違いないと思うんだよ。盗賊は馬鹿だから、謎が解けないんだ。」
カムスはそう言って頷く。
「君はそれを1人で行こうって言うのか?危険じゃないか?」
「確かに危険さ。1人だと死ぬかもしれない。でも、よく聞くと金貨3000枚の値打ちがあるらしいんだ。俺はそれを勝ち取って、遊んで暮らしたい。」
「き、金貨3000枚だって……!!」
銀貨1枚でお酒が1杯飲める。金貨1枚で10杯。3000で……
ああ、頭が痛くなってきた。なかなかの大金だ。
本当に数年遊んで暮らせるぞ。
「明日の夜に行こうと思ってる。内緒だぞ。マク。」
グビグビとカムスは最後のお酒を飲み干した。
「じゃ、またいつか。会えたら会おう。」
「……ちょ、ちょっと待って!」
マクはカムスを呼び止めた。
「それ僕も手伝えないかな」
最初のコメントを投稿しよう!