波多真理 10

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波多真理 10

カタカタカタ。 慣れた手つきでパソコンを打つ、さとちゃん。 「いつだったか覚えてる?波多真理から会長宛てのメールが一斉送信された日は」 「1月20日です、奥様」 さとちゃんはすぐに答えた。 「ということは……1月19日の波多真理が帰った後、ということになるわね」 「そうですよね、その時間から映します」 1月19日18時とパソコンに入力する。法人営業部フロアの監視カメラの映像を流す。 そして、速度を早めた。 「あ」 誰かが来て、パソコンを触り、そしていなくなった。 「さとちゃん、戻して」 さとちゃんは、映像の時間を戻し、標準倍速にする。 そして、その場所の映像をアップにして大きく見やすくした。 波多真理が、会長に送ったメールが間違えてみんなに一斉送信してしまった件。 サンマルクカフェで、波多真理が言っていたこと。 「私はメールを送っていない」 それが気になっていたのだ。 監視カメラに写っていた人物。 それは、 前に給湯室で見たことのある、50代の女だった。 「この人、見たことあるわ……」 「そうなんですか?でも、これではっきりしましたね。あのメールは、波多真理が送ったのではないですね」 「……」 この人は、なんでここまでするのかしら。 私たちは警備員にお礼を言い、その場を立ち去った。
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