3人が本棚に入れています
本棚に追加
波多真理 10
カタカタカタ。
慣れた手つきでパソコンを打つ、さとちゃん。
「いつだったか覚えてる?波多真理から会長宛てのメールが一斉送信された日は」
「1月20日です、奥様」
さとちゃんはすぐに答えた。
「ということは……1月19日の波多真理が帰った後、ということになるわね」
「そうですよね、その時間から映します」
1月19日18時とパソコンに入力する。法人営業部フロアの監視カメラの映像を流す。
そして、速度を早めた。
「あ」
誰かが来て、パソコンを触り、そしていなくなった。
「さとちゃん、戻して」
さとちゃんは、映像の時間を戻し、標準倍速にする。
そして、その場所の映像をアップにして大きく見やすくした。
波多真理が、会長に送ったメールが間違えてみんなに一斉送信してしまった件。
サンマルクカフェで、波多真理が言っていたこと。
「私はメールを送っていない」
それが気になっていたのだ。
監視カメラに写っていた人物。
それは、
前に給湯室で見たことのある、50代の女だった。
「この人、見たことあるわ……」
「そうなんですか?でも、これではっきりしましたね。あのメールは、波多真理が送ったのではないですね」
「……」
この人は、なんでここまでするのかしら。
私たちは警備員にお礼を言い、その場を立ち去った。
最初のコメントを投稿しよう!