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波多真理編 1
夜、11時。
会長(夫)はまだ家に帰ってきていない。
まぁ、いつものことよ。
私はリビングのソファに座り、電話を掛ける。
プルルルル…
3コール目で相手は出た。
彼女はいつも5コール以内には電話に出るのよね。
「今電話大丈夫? 法人営業部の波多真理。調べておいてもらえるかしら。忙しい所、申し訳ないわね」
私は、ソファに足を伸ばして寝ころんだ。
「では、三日後に伺うわね」
3日後。
秘書課。
お昼の時間になったばかりで、デスクには人はあまりいない。
一番奥の席に座っていた、ちょっとぽっちゃりとした眼鏡をかけた女性が立ち上がった。
彼女は、さとちゃん。
里見十志子、54歳。
会社の創業当時からうちで働いてくれている。
几帳面でしっかり者。
会長の3人の秘書の内の一人なの。
私は彼女をとても信頼しているのよ。
彼女は会長の秘書をやる傍ら、会社の雑務も、私の個人的な頼み事もやってくれているの。
会議室B。
カードをかざしてロックを開け、さとちゃんと私は中に入る。
「奥様、この度は、また会長が……」
「そうなの。もう、あの人にはあきれるわ」
「会長には悪いですが、奥様がそう思うのは仕方がないと思います。頼まれていたものはこちらです」
さとちゃんはそう言うと、私にファイルを手渡した。
私は、ファイルをゆっくりと開き、中を見る。
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