縁側の足あと

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「あ、また足あとがついてる。猫かしら?小動物ならイヤだわ。」 私は独りごちた。 ゴシゴシと雑巾で擦るが、縁側の板は古く黒ずんでいて もうキレイには取れそうもない。 「伯母さん、何やってるの?」 「ああ、正彦(まさひこ)。私の見ていない時に何かがここに足あとつけるんだよ。」 正彦は甥で私の弟の息子だ。弟はめったに顔を出すことはないが、正彦はしょっちゅうここに来る。 「伯母さん、猫かなんかならまだいいけど、泥棒でも入ったらどうするの? 僕が入ってきたことも気づいてなかったんでしょ?いい加減、セキュリティなんとかしないと。まあ、この家も補修しないと大地震でもきたら壊れちまうよ。」 数年前に久しぶりに来てくれた時は優しい子だと感激したものだが、それから週に一度は訪ねてくる。そして、三度に一度はこの家の話だ。 正彦は柄の悪い連中とつるんでいて、質の悪い不動産業者の元で働いていると弟から聞いた。弟は正彦を勘当したらしい。 頻繁にここに来るのは、この土地が目的のようだった。 それでも私にとって可愛い甥には違いない。しかし、この家を手離すつもりはなかった。 ここは夫と息子の思い出が詰まった場所なのだ。
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