第1話 折り鶴

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第1話 折り鶴

ほら お母さん、折り鶴を折りました 小さな手で折った折り紙を手に取り 愛くるしい嬉しそうな瞳で母親に折り鶴を渡すと 不思議そうに「どうしたの」そう母親は尋ねます。 折り鶴を1000羽折ると歩けるようになるの 今日は頑張って10羽折りました うれしそうに母に笑顔を見せる静香には希望の輝きが満ち溢れていました。 それに対し母親は少女から遠ざかるように涙を流します。 静香、明日から新しい学校よ早く寝なさい そう言うことが精いっぱいでした。 実は少女は生まれつき足の障害により 足の補装具なしでは歩くことが出来なかったののです。 先生、一生静香は歩けないのですか 残念ながら・・・ 翼を失い自由に飛べない鳥と同じです。 母は一生自由に歩けないのを知っているからこその涙でした。 なんとか翼をつけてあげたい そう願うしかありません しかし、現実とは魔物です 折り紙を1000羽折ったら歩けるようになると信じている、静香 切なさを通り越して悲しみです 少女の苦しみ、不安、期待、希望、それが詰まっている折り紙だったのです 残酷な神が笑っているのでしょうか 静香は、父親が厳格なため言葉遣いは大人顔負けの丁寧な話し方です 長い綺麗な髪、透き通るような肌、優しい性格、可愛らしい笑顔 障害がなければ人気者に違いないでしょう しかし母親には明日からの不安が待ち受けていました 歩行が困難でいじめられることではないかということです 担任の先生にも相談したがそれでも不安は拭いきれません いじめがないことを祈るばかりだったのです 全く未知の世界、今まで初めて見る風景 翌日、静香は緊張と不安を感じながら自己紹介をすることに 本庄 静香といいます よろしくお願いします弱々しい声が教室に響く そこに元気のある、いわゆるわんぱく少年が登場することになります 「白井、可愛いじゃねえか」 少年の名前は山村健一 健一はすぐに静香に一目ぼれし、積極的に行動にでます 静香に住んでいる所を聞いて 同じ地区であるとわかるとすぐさま一緒に帰ろうと誘いました 静香も恥ずかしさの中に嬉しさと力強さを感じていました 本庄さんはどこに住んでいるの 宮地地区です そうか俺も宮地地区なんだ 一緒に帰ろう はい、ありがとうございます 私は言葉遣いが変ですよね 静香は年齢にしては丁寧なしゃべり方に不安を感じていたからです そう健一に問いかけとすぐさま、健一は否定します 「優しい感じだよ」 優しい言葉で静香に優しさを与えたのです 山村 健一と本庄 静香の二人の世界が幕をあけた瞬間でした
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