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第2話 タンポポ
不安の中に静子はいました
今日の体育の授業はバレー、みんなに迷惑をかけるのかな
うまく玉拾いできるかな
誰にでも不安はあります、子供の小さい不安でも大人の不安でも同じです
静香さん今日は見学をするか後ろでボールを触ってみなさい
はい、後ろでボールを触ってみます
ただ静香はいずれの選択も悲しいものでした
少しでも健常者に近づけたいという切なる気持ちがあるからです
しかし、ボールが飛んできても足が動かない
何度飛んできても動かない、何度飛んできても、何度飛んできても
やはり駄目だ
「その時に遂に、静香にとっての片足が現れた」
ほら、代わりにとってあげたよ
健一さん
一人の少女の心を身動きをとれなくさせてしまいました
どれだけ嬉しかったでしょう
また初めて健一が静香を支えた瞬間だったのです
静香は優しい気持ちと共に健一と帰っていった
静香は帰り道に野原にタンポポが咲いていることに気づきました
タンポポ以外のことにも気づいてしまっていたのです
すぐさま、タンポポを摘もうとするも
タンポポの可愛らしさのため積むのを戸惑ってしまいます
「わあ、タンポポ可愛いな可哀そうだから3本だけ摘もう」
家に帰るなり母親にタンポポを3本取ってきたことを告げ
可愛らしくそっとささやくようにこうつぶやいた
1本目はお母さんにあげる
静香ありがとう
2本目は私
3本目は・・・・・
お母さん、タンポポを吹くと飛んで行くのかな
静香、何を馬鹿なことを言っているの、飛ぶに決まっているでしょ
お母さん人を好きになるってこんな感じなのかな
あら、静香は誰か好きな人ができたのね
いえ・・
3本目のタンポポを渡すのに静香の鼓動は
少なくとも遅くはなかっただろう
静香が公園のベンチでぼんやりと景色を見ていた
目的は決まっています。
ついに渡すべき者があらわれた
3本目の渡すべき者とは毎日一緒に帰っているが
今日はいつもと別人にみえるようだ、きっと鼓動のせいかもしれない
鼓動をおさえながら声をかける
「健一さん、タンポポはいりませんか」
「タンポポ・・・・」
「やっぱり要りませんよね・・・」
静香が寂しい表情を浮かべると
「いや、タンポポは最近流行っているんだ」
健一の優しい気持ちが見え隠れします。
タンポポは吹けば飛ぶのですか
ほら、貸して、ふ~飛んだだろ
本当ですね
本庄さんもふいてごらん
半分ずつですね
ふ~
飛んでいきましたね
ああ
健一と静香の心もタンポポのように飛んでいった瞬間でした
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