梅雨のSS

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梅雨のSS

 連日の曇天~雨模様ですが、創作は捗ります。  昨日の17文字SSの続きを作りました。(つい、対の17文字も作りたくなるのです)  濡れないように二人は傘の中で……くっついたり譲り合ったり、雨降りでも、心も弾みますね♪  ここから飛躍して、翠と流の学生時代で妄想しちゃいました。  『忍ぶれど……』番外編SS ~雨の下校~ https://estar.jp/novels/25570850   **** 「翠、また明日な」 「うん! 達哉、また明日」  角を曲がると、弟の流が立っていた。  無骨な青い傘を差して……膨れっ面だ。でも話しかけると嬉しそうな顔になるのを知っているよ。 「流も今、帰り?」 「あぁ。なぁ兄さんって……古典、得意だよな。ちょっと教えてくれよ」 「いいよ。家に帰ったらでいい?」 「いや、今がいい。他の勉強もあって時間がないから、歩きながら……」  流が無言で、青い傘を僕に差し出した。  えっと……どういう意味? 「入れよ」 「う、うん……でも僕は傘持っているよ?」 「道が狭いから、傘を差していると並べないだろう」 「あぁ、そういう事か。そうだね」  いい年して弟と一緒の傘に入るなんて、変な感じだ。 「それで、何が聞きたい?」 「古典の単語がサッパリ分かんねー」 「今。何をやっている?」 「えっと、伊勢物語の筒井筒だ」 「あぁ……『筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに』という歌のだね』  筒井戸の井筒と背比べをした私の背は、もう井筒を越してしまったようだなあ。あなたに会わないでいるうちに……  あれ? そう言えば…… 「流、また背が伸びたな」 「もう、兄さんと並んだ」 「うーん、複雑だ」 「これからは越えていく」 「それは、もっと複雑だ」  いつの間にか目線が同じになっていて、不思議な感じだ。  幼い頃から行きつけの和菓子屋さんの前を通ると、店のおばあさんが手を振っていた。 「あらあら、すいちゃんもりゅうちゃんも、いつも仲良しでいいねぇ」 「すいちゃんか……久しぶりにそう呼ばれたな」 「男の子にいつまでも『ちゃん付け』って、どうかと思うが……まぁ兄さんとセットは悪くな」 「そういえば流は小さい頃、傘を持つの嫌がったよな。いつも僕の傘に入ってきて可愛かった」 「ははっ、今は逆だな」  流が笑う。 「え、だってお前が勉強がって言うから……あぁ話が逸れた。何を教えていたんだっけ?」 「くくっ、まだ何も」 ****  兄さんが俺の傘に入ってくれた。  夢みたいだ。  憧れの相合い傘だ。  平静を装っても、胸の鼓動が早くなる。  ドキドキ……  ドキドキ……   4c1e612b-d82a-414c-832e-f9310b8e3374  傘の中は、二人の世界。  明日も明後日も雨になれ。 「流、もっとこっちにおいでよ。肩が濡れちゃうだろう」  兄さんの左肩と、俺の右肩がくっついた。  新しい熱が生まれる―― bc96f291-a0f9-4b91-9ad7-4113a3d5edbe 『忍ぶれど』と『色は匂へど』は、弟×兄の禁断愛ですが……結ばれるまでの月日のもどかしいこと。でもこういう関係、好きです💕 『色は匂へど』に、このSSのボリュームアップ版を掲載しました! https://estar.jp/novels/25628445  
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