雪の月影寺

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雪の月影寺

本日二度目の更新です。 クリスマスに大切なお友達の沈丁花さん@daphne_estar から、嬉しいお手紙が届きました🎄 なんと素敵なクロスオーバー小説を書いて下さったのです! 『雪の月影寺』は冬の情景がありありと浮かぶ素敵な物語でうっとりしました。 とても嬉しかったので、年が明けたら私の方からもクロスオーバーさせていただきたいなと思っていたのです。それが実現しました。 1d33d551-17aa-4d9b-bd2d-f91bec4c9add 花ちゃんが書いて下さったクロスオーバーは、本日更新の『重なる月』「雪の毛布5」の続きにあたる部分です。⇩ここの続きです。 https://estar.jp/novels/25539945/viewer?page=1440&preview=1 それでは静留くんと東弥くん視点の月影寺の物語をどうぞ💕 **** 『雪の月影寺』 作・沈丁花 「まっしろで、きれい・・・!」  白く覆われた日本庭園に、静留がうっとりと見惚れている。  その様子を眺めながら、東弥は連れてきてよかったと頬を綻ばせた。静留がこんなにも喜んでくれるのなら、なんだってしたい。  今日の東弥たちは、真っ白な雪景色を見るために、月影寺に参拝をしに来ている。 「本当だ、きれいだね。真っ白で透き通っていて何も混じっていない。まるで静留みたいだね。」 「!?・・・あ、あのね、褒めすぎ、だよ・・・?」 「なんで?静留のほうがもっときれいだよ。」 「!!」  さらりといつも通りに交わしているのは、誰かが聞いていれば胸焼けしてしまいそうな内容であるが、平日の昼間ということもあり参拝客も見当たらないため、誰の耳にも届いていない。  静留と手を繋ぎ、美しい冬景色を見渡しながらゆっくりと参道を歩いていると、ふと静留が足をとめ、東弥の手をぎゅっと握りしめた。 「どうしたの?」 「あのね、・・・いっきゅうさんが、こおってる・・・。どうしよう、たすけてあげなきゃ!!」 「凍ってる?翠さんが?」  そうだとしたら大問題である。凍りつくほどに外に放置されていたとしたら、もはや命はないであろう。  しかしそんなはずもないと思い東弥が静留の視線の方に目をやると、確かにその場所には翠が横たわって目を閉じていた。  色っぽく浴衣をはだけ、真っ白なのに首元には淡い桃色の点がついている。 「・・・あのね、静留。これは・・・」  これはどう考えても雪で作られた像である。そして首元の虫刺されに似た跡は絵の具か何かで描かれたものであろう。ともかく流の仕業に違いないと気がついた東弥は、しかしそれをどう静留に説明しようか頭を悩ませた。  というのも、どう見ても事後の朝を匂わせるような像なのである。もしもこれが雪の像だと言って誰が作ったのかまで説明を求められてしまうと、東弥とて居た堪れない。  そう思っていた時、突然栗饅頭のような髪の色をした華奢な青年が声をかけてきた。 「こんにちは。何かお困りですかぁ?」  作務衣を纏った彼は、静留より身長が低く、どこかあどけない風貌をしている。弟にしたいような印象の持ち主だ。  そんな彼に対し、静留は泣きそうな顔で言った。 「いっきゅうさ・・・すいさんが、凍ってて、助けなきゃ、って。。。」 「えっ?住職ならついさっきお部屋で・・・って、あれれ?本当です!これは大変です!!住職、住職ー!!!」  青年は最初平然としていたが、庭の一角に翠の雪像を見つけた途端にさっと顔を青ざめさせた。  東弥は今回こそ説明しようとしたが、青年があまりに急いで雪像に駆け寄り声をかけ始めたので、静留と繋いでいない方の手を額に当ててどうしたものかと息をつく。  そんな矢先、彼の声を聞きつけてきたのか、今度は流が雪像のそばの部屋の戸から現れた。 「おいこもりん、どうした?寺の中でそんなに大声で騒ぐなんて・・・って、俺の翠人形に触るな!!変態こもりん!」 「ええっ!?人形って、どういうことですか!?」  こもりんと呼ばれた彼は、流からの説明を受けてもなお状況を理解できていないようすだ。 「朝の翠がそれはそれは可愛くて、ちょうど雪が降っていたからその美しさを雪に閉じ込めたのさ。こら、見るんじゃない。お子様の目には毒だ。」 「僕はもう大人ですよー!!20だって超えてるんですから!」 「えっ?」  青年の言葉を聞き、東弥は思わず驚きの声を漏らす。  幼い印象をしているうえに静留と一緒に雪像を翠だと思い込む彼は、どう見ても20を超えた大人の男性には見えないのだ。まあ、それをいうなら静留も成人しているが。 「おっ、誰かそこに・・・東弥!早かったな。ちょっと待ってろ。今そっちに行くからな。」 「・・・その前に静留くん、ちょっとお話を聞かせてくれるかな?」  東弥が声を出したことでこちらに気づいたらしい流が、早歩きで東弥たちの元に到着するより前に、別の扉から見知った声が聞こえてきた。  振り返れば、幸薄げな美しい男が、こめかみに汗を浮かべながら微笑んでいる。 「いっきゅうさん!!・・・あれ、いっきゅうさんがふたり?」  雪像と彼の姿をきょろきょろと見比べながら、静留が驚きの声を上げた。 「静留くん、驚かせてごめんね。あれは僕ではなくて、雪で作られた・・・僕の姿をした雪だるまなんだよ。」 「!!すごい、そっくりだ!!きれい!!」 「だろ?静留くんは見る目がある。俺の傑作だ。」  少し遅れてこちらに到着した流が豪快に笑い、わしわしと静留の頭を撫でようとしたが、その手は翠によって止められる。  なんとかポーカーフェイスを保っている翠の顔は、真っ赤な耳だけが羞恥心を隠しきれていない。 「・・・お寺の、お客さんも見るようなところに、な、なんてものを!!」 「その・・・悪い、朝の翠があまりに美しくて表現するのを堪えきれなかったんだ。」 「美・・・と、ともかく、あれはだめだ!すぐに消さなきゃ!」  もはや東弥と静留がいるのも忘れて翠は顔を真っ赤にしている。 「・・・せっかく作ったのに・・・。俺の翠を消すだなんて。布で隠すのはダメか?」  そんな翠に、流は目を潤ませてお願いを始めた。 「うっ・・・布が剥がれないようにちゃんと重しを置くなら・・・。」  やれやれと苦笑する東弥の横で、静留はこもりんと”人形でよかったね”、と笑い合っている。 「すみません、お見苦しいところを。さあ、お二人とも寒いでしょう。お茶とお菓子を用意しますから、上がってください。」  一瞬で住職の顔に戻った翠に、こもりんが”あんこのお菓子はありますか?”と目を輝かせて問いかけた。  今日も月影寺は賑やかである。     
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