空飛ぶ彼女

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空飛ぶ彼女

 僕は牢の中で鎖でがんじがらめ。誰も僕を滅ぼせないから。封印の札を何枚も張られて今、身動き取れないでいる。罪状は思想犯。  牢の隙間から外の風景が見える。街にはいくつもの噴煙が上がっていた。国軍と革命軍が戦っている。  「お兄さん、出してあげようか」  ある時、革命軍の少女が牢の隙間から声をかけてきた。  「出たって無駄だよ。やっぱり封印されるから」  「お兄さん、物知りなんだってね。国王を倒す方法を教えてよ」  「じゃあ、その代わり君の世界を分けてくれないかい」  僕は彼女に知識を与えた後、無限のデータベースが詰まってるコンピューターを頭にかぶった。僕は魔法使い。何もないところにコンピューターを出せる。ただここから出られないだけだ。  外の世界の彼女の思考を検索してリンクする。  これで二人で一人になった。  彼女は革命軍の中の花形空軍。腰につけたジェットで空を舞う。  暁の空を裂いて、紺碧の夜空を渡り、鳥と一緒に虹を超える。大気の唸りを子守歌に音速の空中遊泳。彼女は手にした武器で地上にいくつもの噴煙を上げて国軍を蹴散らした。  王城に乗り込み、私の教えたルートを通って国王の寝所にたどり着く。国王と大立ち回り。彼に憑いた悪魔をいぶりだして撃破した。――美しい人だった。  翌日彼女はやってきた。  「神様」  「私は神様じゃないよ」  「いいえ、神様です。わが軍の顧問になってくれませんか」  僕は牢から出された。  彼女は嬉しそうに報告してきた。  「手始めにあなたを苦しめていた看守たちを血祭りにあげました。後はどうしましょう」  僕はここから教えることになった。  「君、血祭はいけないよ」  「はい神様」  「僕は三蔵だ。君、名は何というの」  「孫悟空」  赤い棍棒を背中にしょって、彼女は花のように笑った。  (終わり)
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