もはや異世界しかない!

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「……載ってたんだ」 「何の話?」  さめざめと泣きながら星歌、先を続ける。 「載ってた、私の家、大島てるに……」 「あぁ……」  それが、今朝のできごと。 「俺もお母さんから聞いておかしいとは思ってたんだ。ずいぶん家賃が安いなって。即決する前に相談してくれれば……」  もうあの部屋には戻れないよ……そう呟いてうなだれる星歌に向かって「それで? 出たの?」と実に無神経な質問を投げかける行人。 「出てないなら平気だろ? 姉ちゃん、ずぶといし」 「ヤだよ、ヤだよ。事故物件と知った以上、もうムリだよ。オシャレの極みと思ってた壁紙のマーブル模様が、もはや人の顔にしか見えなくなったもん」  まさか、今日からうちに居座る気なんじゃ……と呟いて目を見開く義弟。  そんなの軽くスルーして、彼女は最悪な一日に降りかかった次なる災厄の話にうつる。
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