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「異世界に行けば……異世界にさえ行けば、私だって何とかなるんだ! イケメンに囲まれて、働きもせず、良い暮らしをして、しかもチヤホヤしてもらえるんだ!」
上体の動きに合わせて右足を大きく踏み出す。
車の前に飛び出すタイミングを図っているのは明白だ。
何度か足を踏み出し、引っ込めて、そしてまた踏み出した。
それから、おもむろに向きを変える。
「って、止めろよ! 行人!」
腕組みをしたままの行人、白々しくキョトンとした表情をつくった。
「えっ、止めていいの? 異世界に行くんじゃないの?」
「バカ! うまく行けたらいいけど、気が付いたら病院のベッドの上かもって考えたら思い切れないんだよ。それって異世界転生の失敗だけじゃなくて、交通事故じゃないか! 大惨事だよ!」
したり顔で頷く行人。
「何より、轢いた車に迷惑をかけるもんね」
トボトボと、はた目にも憐れなくらいに肩を落とした義姉の姿に笑みをこぼす。
「まぁ、星歌が異世界に行くなら俺も一緒に行くから」
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