もはや異世界しかない!

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「モデルになってくれないかと、白川先生に伝えてくれないか」 「………………」 「あれ、聞こえているかい? 従兄弟かはとこか何かの君?」 「……ア・ネ・だ・よっ!」  乙女の想いを踏みにじられた星歌、すでにヤケクソである。 「エエイ!」と叫ぶと、呉田先生の眼鏡を奪って運動場の方へと放り投げた。 「ああっ、ぼくの眼鏡……」  悲痛な叫びと同時に、朝練で走り込みをしている野球部員の足元で眼鏡は跳ねる。  なぜか急に飛んできた眼鏡を踏んでこわしてしまい、驚いたのは野球部員である。  フレームが曲がった眼鏡を拾って、あわててこちらに駆け寄ってきた。  先生、すみませんとスポーツ選手らしくさわやかに謝る生徒に、呉田先生は目尻を下げる。 「いいよ、いいよ。君のせいじゃないから」と言ったのは、この場合当然のことであろうが。  騒ぎを聞きつけた上司に呼び出されたのも、ある意味当然のこと。  試用期間中のアルバイト事務員が起こした得体のしれない狼藉に、上司は軽いパニックに陥っていた。  星歌が「すみません。辞めます」と告げたのも、致し方のないことであったろう。  たとえお咎めなしですんだとしても、いたたまれない思いを引きずりながら通勤するのは辛すぎる。 「姉ちゃんが呉田先生にフラれて騒ぎを起こしたってのは噂で聞いたんだけど、まさかそんな下らないことになってたなんて……」  うっ、俺がいたら……と俯く義弟の肩が揺れている。  笑いをこらえているのだ。
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