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ココアを飲み干して、星歌は「アァ……」と大きく吐息をついた。
「住んでた家は事故物件。恋に破れ、職を失い……。なのに私は今、義弟に笑われているんだなぁ」
「ご、ごめ……、姉ちゃ……」
遠くを見つめるように半眼を閉じる星歌。
その顔やめてと行人がもだえている。
「私とお前がはじめて会ったのはいつだ? 忘れもしない小三の夏休みだ。あのころ、お前は可愛かった……。私より小っさくて、照れくさそうに、おねえちゃんって呼んでくれたな……」
ああ、私の天使が降臨したと思ったものだ……。
芝居がかった仕草で両手を広げると、行人はついに耐えきれなくなったという調子でのけぞった。
ヒーッと喉から音が漏れているが、笑い声をあげるまいと懸命に堪える様子が、どこかいじらしくもある。
「けどな、お前は大きくなるにつれ背は高くなるわ、顔は美人になるわ、頭はいいわ、運動もできるわ、モテるわ。どんな悪魔になってしまったんだ」
「だ、だから、俺のせいじゃな……」
「憧れの先輩に呼びだされて胸おどらせて行ったら、行人と付き合いたいから仲をとりもってって相談ばかり。何だそれは……BLか! 全国の乙女がキュン死するボーイズラブの主人公か何かか!」
それから星歌は、やおら指を折り始めた。
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