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「中一のときも、中三のときも、高一も高二も。何で私は義弟にオトコを取られ続けなきゃなんないんだ!」
「……姉ちゃん、数多すぎ」
「私は恋多き乙女なんだよっ!」
「乙女はそんなふうに絡んでこないって。もういいから、今日は泊めてあげるから寝なよ。事故物件のことと仕事のことは、明日いっしょに考えよう」
笑いをどうにか呑みこんで、星歌の背をさすってやる。
服の布越しに行人の手のぬくもりを感じて、彼女は今度はスンスンと鼻をすすりはじめた。
「ごめんね。恋も仕事も家もなくして、こんな夜中に義弟の家でクダ巻いてる女がお姉ちゃんで……」
背中をなでる手が、一瞬ビクリと震える。
「俺は星歌を姉なんて思ったことないけど」
「えっ、なに?」
囁き声を聞き逃した星歌。義弟の方を振り返るが、彼はゆっくりと首を振ってみせた。
星歌の背から手をはなし、そっと身を寄せる。
「なに?」
腕と腕がぴたりとくっつくくらいの距離に、星歌の声が上ずった。
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