もはや異世界しかない!

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 そういえば、この義弟は社会科の担当で、大学のときは西洋史を専攻していたんだっけ。 「あと、ベルサイユ宮殿にはトイレないけど。星歌、住める? バケツやおまるに用を足して、庭に捨てるんだよ」 「うぬぅ……史実で反論するんじゃない。この世界史オタクめ。私の清らかな夢を、おまるでぶちこわすなんて……」  うんちくを一つ披露して、行人は満足そうだ。 「そ、そういうお前こそどうなんだ? お前だってキッスもまただと、姉は知っているぞ?」 「キッスって……」  行人の視線が一瞬、泳ぐ。 「キスって言うのが恥ずかしくて、わざわざキッスって促音入れてるんだろ」 「そくおん?」 「キッスのツみたいな、詰まる音のこと」 「うっ……」  この男、ほんとうに私と同じ年月を生きてきたのかと言いかけた星歌の前で、義弟はしれっとした表情をつくってこう告げた。 「俺は、したことあるよ」 「えっ……ええっ!」
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