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小さな声で呻きながら、その場で足をもつれさせた。
手首を回転させた勢いそのままに上体がねじれ、星歌の視線は一瞬にして天井と壁、それから床をさまよう。
「危ないっ」
背中にあたたかな感触。
これは、行人の腕?
次の瞬間、星歌の瞳に彼の顔が大きく迫った。
「なっ、んんっ……」
ココアの甘い香りが唇を覆う。
柔らかな感触。
──何コレ、うまく喋れない……。
そう思った途端、状況を理解する。
床に倒れかけた星歌を、行人がとっさに腕を伸ばして受け止めてくれたのだ。
だが勢いは死なず、バランスを失った彼女を庇うため、彼は身を回転させ背中からフローリングに倒れ込む。
その胸に乗るかたちで一緒に倒れる星歌。
気付けば義弟を押し倒し、その唇に自らのそれを重ねる体勢になっていた。
「ゆきっ……違っ、異世界っ、キンパツ、イケメン、オウジ、ガッ……」
衝撃が強かったか、息を吸いながら例の単語を並べる星歌。
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