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昨夜はあんなに焦がれた金髪王子のいる異世界。
けれども、今は生々しく残るあの感触を消すことに必死だ。
昨日からの一連の悲劇──失恋と失職のダブルパンチですら、遠い過去のように実感が薄い。
心ここにあらずという状態のまま、辞めた職場に「出勤」してしまう始末。
事務室に入った瞬間、己に注がれた視線の痛さに我に返り、そそくさと学校を出てきたところだ。
校門を出る直前、ぽってり太った主任が息を切らせて追いかけてきたので、てっきり留意されるのかと思いきや通行証を兼ねたネームタグを返せと言われた。
普段の星歌であれば「もはや死にたい」→「異世界へ行くしかない」という発想に取りつかれるところだが、学校の前をウロウロしながら思うのは昨夜のキスのことばかり。
「だから事故だって、アレは。だって私のはじめてのキッスが、ジャージのズボンはいてとかありえる?」
色気もなにもないじゃないか!
そう叫びかけ、星歌はふと立ち止まる。
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