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そういや行人が言っていたっけ。自分はキスをしたことがあると。
「だれと……?」
親の再婚で姉と弟になって以来、同学年ということもあり行人とはいつも一緒だった。
恋多き──残念な、という形容詞がつく──姉に比べ、弟はもてるわりに浮いた噂ひとつなかったではないか。
歴史オタクが高じて現代人には興味がないものだと思っていたのだが。
「私にナイショで、誰かと付きあってたのかな……」
何故だろう。小さな針がチクチクと心臓の表面を嬲るよう。
「………………」
下くちびるを押す己の指先。
その指がビクリと震え、隠すように背中に回されたのは、突如聞こえた細く高い悲鳴のような叫び声のためだった。
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