残念、星歌はホレっぽい

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 女子高生、色素の薄い長い髪をさわる様子をみせる。  横の髪を耳にかけるふりをして、顔を隠しているのだということは分かった。  その反応に、星歌は早速「シマッタ」と心の中で叫ぶ。  ついつい、首を突っ込んでしまったけれど、自分も彼女にいたたまれない思いをさせていると察したからだ。 「ま、まぁまぁ。私もね、よくやるんだ。踏んづけてズルッって転んじゃったりするんだよ。犬のウン…………エヘンッ!」  慰めようとしたところを、別方向から注がれるジトッとした視線に気づいて、慌てて咳払いで誤魔化す。  パンのケースを持った人物が、闖入者の失言に顔を真っ赤に染めているのが視野に捉えられたからだ。 「まぁ、その……パンだよね。もったいないね」  クリームパンであろうか。  半分は地面に張り付いているものの、残り半分はきれいな形で残っている。  星歌はそれを手にとった。  小さくちぎって躊躇なく口に入れる。 「うん、おいしいよ」  裏口際の台にケースを置いて、職人が急いでこちらに走ってきた。 「そ、そんな……落ちてるものを食べなくても……」 「大丈夫だって! 3秒ルール適用だよ」
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