残念、星歌はホレっぽい

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 想像してみる。  少女と見紛う可愛らしい男性ふたりが、焼き立てのパンを手に笑い合っている様子を。  可愛らしい兄弟が営む、可愛らしいパン屋さん。  なんだか童話の世界のように思えて、星歌は目を細めた。  そのときだ。  翔太が「あっ」と声をあげた。  口元には笑みの形が浮かんでいる。 「初日から遅刻ってどうなんだよ、兄さん」 「ごめんごめん」という声の方へ視線を向けて、星歌は目を見開いた。  可愛らしい兄弟という想像図がガラガラと音たてて崩れていく──兄のほうだけ。  そこにいたのは長身の青年。  金髪碧眼、日本人が持ち合わせない彫りの深い顔立ちと爽やかな笑顔。  青い目が、怪訝そうに星歌に注がれる。 「あっ、困ってたところをこの人が助けてくれて……」  説明をはじめる翔太の前にズイと星歌は身を割り込ませた。 「モノホン王子じゃないか! ついに神は私に微笑んだ……いえ、オーナー! 私の名は白川星歌と申しまする。今日から一生懸命働きまする!」
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