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それから星歌の方に向き直った。
「学校だって本当に辞めることないだろ。そりゃ居づらいのは分かるけど、少し落ち着いてからもう一度ちゃんと考えたらいいんだし。退職取り消せるように、俺からも頼んでみるから」
「う、うむ……」
「うむって何だよ」
良かった──星歌は胸を撫で下ろしていた。
行人の顔を見て、誤作動を起こしたように心臓の鼓動が早まった。
熱が集中したかのように頬も熱い。
当然だ。
脳裏には夕べの出来事が鮮やかに蘇ったのだから。
しかし、義弟の方はそうではなかったらしい。
そう、普通。いつもといっしょ。
そのことに星歌はホッとしていた。
「まだ四時間目の授業中だけど、もうお昼? サボリかな?」
声が上ずったろうか。
行人が一瞬、怪訝そうに眉をひそめた。
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