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「いや、学校のすぐ前に新しいお店ができたから空き時間に偵察。一応、教師として」
「ああ、そっかそっか。あんたは立派な先生だよ。ついでにパン買っていきなよ」
「う、うん……」
眉間に寄せた皺を深くして、行人がカウンターのこちら側へ入ってくる。
隣りに棒立ち状態の翔太を肘でグイと押しやり、星歌の隣りに立った。
「痛っ、ちょっ……部外者は」
「まぁ、学校辞めるってんなら別にそれでもいいと思うよ。俺は」
吠える翔太の声など聞こえちゃいないという風だ。
「けど、急いで新しいバイト始めなくても。しばらくゆっくりしたら? 事故物件も引き払って実家に帰るか、それか狭いけどうちに来てもいいし。そしたら家賃の心配もしなくていいし」
行人は優しい笑顔を義姉に向けた。
「そ、それは……」
それはそうなんだけど……と、徐々に小さくなる星歌の声。
「実はそうもいかないんだよ。私には借金があるんだ……」
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