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「借金!? ちょっ……星歌、いつの間にそんなことになってんの!」
義弟の笑顔が凍りつく。
「ち、違うって! お母さんにだよ。大学のとき乙女ゲーにハマって課金しまくったせいで……」
やりすぎた。自分でもどうかと思ってる……そう呻いて頭を抱える星歌。
あのときは乙女ゲーのイケメン王子のスチル集めのことしか頭になかった。母親に借金してまでつぎ込んだものだ。
「乙女ゲー……ああ、スマホゲームね。そういやあの時期、星歌、奇妙に浮いたことばっかり言ってたよね」
行人の表情が微妙に歪んだ。
「借金してまでゲームにつぎ込むか? 第一、強くするのが面白いんであって、課金でその過程を省くなんて肝心のゲームの面白さを味わってないことになるんじゃ……」
「うるさい。強さとスチルは別なんだ。そこが乙女ゲーの真髄なんだ」
「呆れたよ……」
──まぁ、姉ちゃんは乙女ゲーにハマってるくらいがちょうどいいんだけど、とボソッと呟く。
「えっ、何か言った?」
「いや、こっちの話」
星歌が何か言うより先に、行人の向こう側から怒りに震える声があがった。
「仕事の邪魔だろ。あっち行けよ」
翔太である。
小柄なので行人の影にすっぽり隠れてしまっていて、星歌の視界から完全に消えていたのだ。
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