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腰が引けたように星歌は行人と、彼を囲むJKからジリジリと後退した。
気付かなかったが、義弟は生徒から人気のある教師のようだった。
世界史オタクのおすまし野郎(星歌・談)だが、ともすれば物静かなその態度は落ち着いた大人の男性とも受け止められるだろうし、学校という閉鎖空間の中ではそこそこ整った彼の容貌は目を引くものであろう。
「お店に迷惑だから、パンいる子は早く買って学校に戻りなさい」
困ったように生徒をたしなめているが、おそらく内心は満更でもないはずだと──星歌の目がいやらしく細められる。
「はぁ、参りましたねぇ。どんなタイプの女の子でも、よりどりみどりじゃないですか。おや、まさにギャルゲーですねぇ」
いつもならすかさず入る行人のツッコミを待つが、今の彼にその余裕はないようで。
展開に呑まれたか壁に背をくっつけて呆然と立ち尽くしていた翔太が、新しいバイトが発した奇妙な独り言にギョッとしたように身を強張らせた。
だが、星歌はかまわず続ける。
目線はじっとり。JKらに注がれたまま。
「おやおや、良い子たちばかりじゃありませんかぁ。可愛い系、ツンデレ系、お嬢様系、しっかり者の優等生系、おや、メガネキャラもいますねぇ。さて、義弟の厳しい審査に合格するのはどこのどなたでしょうねぇ」
翔太の口がパクパク動いているのだが、無視。
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