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その表情に、星歌の重い胃はピクリと痙攣した。
直感。
──この子、行人のことを?
そう悟った瞬間、濡れた目がパチパチとまたたき、こちらに向けられた。
スラリと背の高い身体にはみんなと同じ白いセーターとプリーツスカートをまとっており、生徒のひとりであることはうかがえる。
その薄茶の長い髪には見覚えがあった。
「あっ!」
星歌が何か言うより先に彼女の口が開かれた。
意外と明るい声。
その声は星歌には聞き覚えがあるものであった。
「さ、さっきはごめんなさい」
身を縮めるようにして俯いたのは、朝方、店の横ですっ転んでいた女子高生だ。
よく見ればスカートの尻のところが土に汚れている。
なんとなく朝とは雰囲気が違って見えたのは、彼女の表情が幾分沈んだように見えるからだろうか。
みんなと一緒に行人に絡むこともせず、所在なさげにひとりで立っているのも気にかかった。
「い、いや、そんな……そっちこそ、いやこっちこそ……ウグッ」
さっきはごめんなさいと言われた翔太が「ウグッ」と唸って、肘で星歌の脇腹をつつく。
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