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ひとり離れたところに立つ背の高い女子高生の元へ駆け寄ったのだ。
大袈裟なくらい大きな声をだして。
「奥で休んだらいいよ。こっちこっち」
きっと心配そうな声に聞こえるに違いない。
「あの……」
現に目の前の女子高生は戸惑ったように首を振って、小さな声で「大丈夫です」と繰り返している。
JKに取り囲まれていた行人は、このちょっとした騒ぎにこちらを振り向くだろう。
自分が困っていることにきっと気付く。
行人のことだ。そうしたら、彼女らを追い返し「姉ちゃん、ごめんね。大丈夫?」と駆け寄ってきてくれるに違いない。
なぜなら義弟は、生徒よりも義姉である自分のことを大切に思っているはずだから。
不器用な星歌であったが、女である。
これくらいの計算は簡単にできた。
教師に想いをよせる女子高生を利用するなんて、ワケないのだ。
声色を変えて彼女の頬に手を伸ばす。
ふと、その指先が止まった。
「アレ、照れてるのかと思ったけど、ホントに顔色悪いよ? 大丈夫? 具合悪いとかじゃ……」
てっきり行人を見て顔を赤らめているのかと思ったのだが、どうやらそうでもないらしい。
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