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そうなると、胸に去来するのは罪悪感だ。
「だ、大丈夫ですから……」
茶色の長い髪が頬にかかり、その隙間から沈んだ表情が覗く。
星歌は焦った。
「いいってば。遠慮はいらないから休んでいきなよ。調子悪いんでしょ。それか心配事? ごめん、熱ないかおでこ触るよ?」
再び動きだした星歌の手。
その指先がそろりと彼女の額に触れる一瞬前。
手首をグイとつかまれた。
「痛っ……」
強引に引き戻される。
行人であった。
星歌の思惑どおり、生徒たちのもとからこちらへ駆け寄ってきてくれたのだ。
「行人、痛いよ」
優越感から、苦情の声は甘く響いたに違いない。
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