241人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、その言葉は途中で空しく掻き消えた。
行人が、つかんでいた星歌の手を振り払ったのだ。
そしてその手は星歌の目の前の薄茶の髪に伸ばされる。
「石野谷、大丈夫だったか?」
「うん、先生……」
至近距離で見つめ合うふたり。
「あのぅ……」と振り絞った星歌のか細い声など、ふたりの耳に届く前に消えてしまったようだ。
「学校に戻ろうか」
石野谷と呼ばれた生徒は、コクリと頷く。
JKらに一声かけると、行人は守るように背の高い女子生徒の傍らに立ち、店を出て行った。
「あの、ゆきと……」
未練がましく伸ばされた星歌の手は空しく空をつかむ。
その目の前で、扉が派手な音を立てて閉まった。
──あっ、ヤバイ。
最初のコメントを投稿しよう!