鎌首

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 少々ぼんやりしていたのは事実であり、その点については星歌としても反省している。 「はぁ……何だか、もうイヤになってきたよ。バイトや派遣に対して、育てましょうって気がないんだよ。試しに軽く雇って、もし使えそうなら安い時給でこき使うかんじじゃない。ちょっとでも使えなさそうなら速攻契約解除。もう辛くなるよ。厳しすぎるよ、こんな世の中……ああ、爆モテ間違いなしの異世界へトリップしたいものだよ……」   悪いクセで。  うつろな眼差しでブツブツ言っている。  星歌としては、もはや被害者気分満々なわけだ。  朝いきなり雇われて、叱られたりしながら夕方まで。  腿のあたりはパンパンに張っているし、腰も痛い。  白川さん、と呼ぶ声が遠くに聞こえるものの、星歌は意に介さなかった。 「……もはや異世界じゃなくてもいい。働かずに楽に暮らせるところに行きたい。毎日昼までゴロゴロ寝てたいんだ。できれば誰のことも考えたくないよ」 「白川さん? ねぇ、大丈夫?」  今度は耳元で怒鳴られ、星歌は文字通り悲鳴をあげた。 「大丈夫? さっきから呼んでたんだけど……」  心配そうに眉根を寄せてこちらを見上げるのは、星歌曰く「チビデーモン」翔太であった。  ピョンと跳ねる金色の毛先と、つむじの黒を見比べながらも星歌、余裕のない笑い声をあげる。
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