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「今度は何ですか。ダメだしですよねぇ。申し訳ありませんねぇ……」
「いや、そうじゃなくて」
目の前のつむじが、翔太自身の手で隠された。
目を覆う前髪をかきあげてから、彼は星歌に封筒を差し出す。
「今日はありがとうございました」
そう言ってペコリと頭を下げたのだ。
「オープン初日だったから本当に助かりました。バイト募集してなかったのはこっちの手抜かりなのに、急にお願いしてこんなに手伝ってもらって……」
「いやぁ、べつに……」
心の中で悪態をついていた相手に礼を述べられ、戸惑うと同時にじわりと胸に灯が点るのを感じる。
働いて「ありがとう」と言われたのは初めてだった。
疲れきった身体にあたたかな血潮が流れ出す。
きっと、口元もニヤけているに違いない。
察するところこれは……と、緩む頬を誤魔化すように封筒を指で触ってみる。
薄い──。
これはもしかしたら万札か?
ニヤつきながらサスサスと封筒をさする星歌を前に、しかし翔太の真剣な表情が崩れることはなかった。
「今日はいきなりだったから、それをお礼ってことで受け取ってもらえないかな。それで、あらためてお願いなんだけど。良かったら、本当にバイトしてくれないか?」
今日、すごく助かったから──その言葉に、星歌は封筒を握りしめる。
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