鎌首

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「応援とか頑張ったら、ノド痛くなったりしたなぁと。そういう思い出もあったかなぁと……」  困ったように眉をひそめ、それから行人が静かに肩を揺らす。  どうやら笑っているらしい。 「……いや、星歌がアホなの忘れてた。あっ、アホじゃなくて天然」 「それ、言い直す意味ある? どっちにしろ私のこと小馬鹿にしてるよね!」 「してない、してない。事実だけを言ってる」 「そこだよ! あんたのそういうとこだよ!」  声を荒げながらも、どこかホッとしているのは確かだ。  行人の目がいつもの穏やかなものに戻っていたから。  蛇を連想させるさっきの目つき。  冷たい息吹に、心臓が凍る予感を覚えたから。  おつかれさまの声に送られるように、夕暮れの朱色の世界へと星歌と行人は吐き出された。  黙ったまま並んで歩を進めるものの、星歌の足取りは幾分重い。
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