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「あっ、ゆき……」
電話の相手はあの生徒なのか?
昼間、行人に庇われるようにして学校へ戻っていった背の高い儚げな美少女。
なぜ、こんな時間に教師に電話をかけてくるのだ。
そもそも、教師が一生徒に携帯番号を教えるものなのだろうか。
だが、そんな問いを口にする暇はなかった。
スマートフォンを耳にあてると、行人は彼女に背を向けてしまったから。
何をしゃべってるのかな──湿った感情がジワリと鎌首をもたげる。
この距離では何と言ってるかまでは聞き取れないし、聞いてはいけないのも分かっている。
右手首の星のブレスレットが警告のように小さな音をたてたが、星歌の足はジリジリと前に進んでいた。
「──そこにいて。すぐに行くから」
行人の声がいつになく固く聞こえたのは、きっと自分と彼の距離のせいだと星歌は悟る。
ねぇ、どこに行くの──そう問うと、通話を切った行人の肩が驚いたように強張った。
「……ちょっと、緊急事態で」
いつになく凄みを感じさせる星歌の声に驚いたのだろう。
行人の口調はどこか言い訳がましく聞こえた。
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