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ゴクリと喉を鳴らしたのは星歌である。
砂を食んだように、口中は乾いていた。
ジワジワと胸を蝕む激情そのままに、行人に向かって手を伸ばす。
「ダ、ダメなんだよ? 生徒とこんな時間に会ったりしたら。コンプライアンスがアレなんだよ」
抗議するにも、己の語彙の乏しさが恨めしい。
結局、口より先に手が出る。
気付けば星歌の右手は、義弟のスマートフォンをひったくっていた。
タイミングよく再び点滅しだした画面には『石野谷』の文字。
水風船が割れるように、感情が爆発した。
滴り落ちる負の感情。
液晶を叩き割る勢いで着信拒否をおすと、そのまま右手を振り上げる。
「ちょっ、嘘だろ! やめろよ、姉ちゃん!」
投げ捨てられては敵わないとばかり、行人が彼女の腕に取りすがる。
「放せっ!」
「どうしたんだよ、姉ちゃん?」
「うるさいっ、姉ちゃんって呼ぶな!」
叫んだ拍子に、手からスマートフォンが滑り落ちた。
「あっ!」
恐怖の波が押し寄せる。
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