鎌首

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 ふと、空気が漏れるような小さな笑い声。  見上げれば行人が手を差し伸べてくれている。  唇の端を歪め、苦笑いの表情。  いつもの義弟の顔だ──そう感じた星歌は破顔した。  地面に腰を落としたまま、モゾリと尻を動かして体勢を整える。  右手をゆっくりと浮かせた。差し出された手を握るために。  しかし、無情なバイブ音。  スマートフォンがまた例の女の名を映し出している。 「ごめん、姉ちゃん。俺、ちょっと行ってくるよ? 姉ちゃんはひとりで大丈夫だろ」  向けられた背中。 「待っ……」  宿り木を失った星歌の右手は宙をさ迷った。  細い指のはるか先には薄闇が忍び寄る夕の空。  朱色の手前に白く輝く星が揺れた──その瞬間。  プツン。という音とともに何かが切れる。  呆然と目を見開く星歌の眼前で、ブレスレットの星がバラバラと地面に零れ落ちた。
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