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それは、星歌のブレスレットの馴れの果ての姿である。
手作りのアクセサリーだ。
作られてから長い年月の間に中の糸が劣化していたのだろう。
僅かな衝撃で弾け、バラバラに壊れて飾りが落ちてしまったのだ。
「……行人は覚えてないよね」
震える指先が、小さな星をひとつひとつ拾い集める。
次第に星の輪郭がぼやけていくのが分かり、星歌は下唇を噛みしめた。
義弟の態度がいつになく冷たく感じられたこと、それ以上に押し寄せる自己嫌悪。
負の感情をいっぱい詰めていた水風船の残骸が、まだ腹の奥にこびりついているようだ。
押し潰されまいとするかのように、わざと明るい声をあげて現状を嘆いてみせる。
「あーあ、義弟も独り立ちだよ。や、とっくに独り立ちしてたよね、あの子は。もう私なんて完全に見捨てられちゃったよ……昔はお姉ちゃんって呼んでくれて……可愛くて……」
ダメだ。
拾い集めた星が、手の平でにじんで見える。
「リ、リア充はほっといて、もう私には本格的に異世界しかないようだね。いっそイケメン魔王にさらわれて城に閉じ込められたいもんだよ。城といってもアレだ。ベルサイユ的なアレなんだ。そして、寂しい過去を背負った魔王と恋に落ちるんだ……」
ハハッと力なく笑う。
いつもの妄想だが無理にでも笑ってみせたことで、幾分気持ちが明るくなった気がする。
カラ元気であっても構わない。
星歌はその場に立ち上がる。
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