夜空に降る涙

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 暗がりの中でも目立つ跳ねっ毛の金髪だ。その中心部のつむじのあたりは闇に沈んでいる。  星歌の新しい雇い主である藤翔太だった。  身長に似合わず意外と逞しい腕、そして厚い手の平を唇に感じ、星歌は再び焦る。  パンをこねる手はやっぱりゴツイんだなぁ。だから私もビックリしちゃったんだなぁ──持ち主の意志に反して高ぶりそうな心臓を必死で宥めにかかる。  あたたかくて、どこか甘い香りがするのもきっとそのせいなんだ、と。  その手は遠慮がちに放された。 「ごめん。白川さん、ずっと一人で喋ってて……その、ちょっとよく分かんないことを一人で喋ってたから、大丈夫かなって思って。びっくりさせたよね……」 「い、いや……」  しっかり聞かれていた模様。  ──ヤバイ! 「一人で喋って」と二回言われた……。  星歌の背を、冷たい汗が伝う。  薄暗い道なので、恥ずかしさに赤く染まった顔を見られないのだけが救いだ。  視線を逸らしつつ、星歌は一歩、二歩と後ずさる。 「そ、それで、何用で……?」
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