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「武家が履いてた袴で、すそが長くて後ろに引きずるような。忠臣蔵の松の廊下のシーンで浅野内匠頭が着ていたやつって言ったら一番分かりやすい?」
「ブケガハイテイタハカマデマツノロウカでアサノ……キテタ……」
一瞬、オヒメサマ的なものを想像したのだが、それが足元に布を引きずって履く男性用の袴であると気付き、しかも暗に足の短さを小馬鹿にされているのだと悟った星歌はプクッと頬をふくらませる。
「意味の分からないことを言う。そういやお前はどうしようもない歴オタだった」
ごめんと言いながらも漏れる笑い声。
「別に姉ちゃんの足が短いわけじゃなくて……まぁちょっと短いかもだけど。そのズボンは男ものだから丈が余るのは当たり前だって」
「うぬぅ……フォローしつつも、さりげなくディスられた気分だ」
同年代女性の平均身長より幾分背の低い星歌。
慣れないヒールの靴を履いて背伸びをしたものの、ただ疲れるだけの一日となってしまった。
うつむいた彼女の周囲を、甘い香りが包み込む。
「はい。元気出して」
いつものマグカップを手渡された。
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