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濃い目のココアが湯気をたてている。
「あ、ありがと」
カップを両手で持ち、ズズと音をたてて少しずつすする彼女の向かいに行人は座った。
ひとつしかない座布団は星歌が使っているので、フローリングにあぐらをかく格好だ。
思えばこの部屋にひとつしかないマグカップも星歌が使っており、彼は湯呑にココアを入れていた。
床が冷たいのか、裸足の足先がすこし縮こまっている。
「俺はいいと思うけど?」
「なにが?」
義弟の足を凝視していたことに気付かれてはマズイとばかりに、星歌は顔をあげた。
「いや、その……短いスカートの下にジャージのズボンっての」
「な、なにがいいの!? 義弟よ、お前の性癖なんて知らないよ!」
「性癖って……」
行人の笑い声を聞きながら星歌は自問していた。
なんだかホッとする。ホッペが熱い気がするのはナゼだろうと。
「そりゃ、ココア飲んでるからだよ」
「何が?」
「いやいや、こっちの話」
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