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プロローグ いつかきっと、恋心
やわらかな感触が口を覆う。
──なにこれ?
全神経が集中された唇は、わずかな動きにも過敏に反応した。
あたたかくて、優しく湿った、なつかしいお菓子のような弾力。
視界いっぱいに迫るのは、見慣れた義弟の顔だった。
けれども、睫毛が触れあうほどこんなに近くに接したことなんて、ない。
その大きな黒目の中に、驚愕に強張る己の姿を認め、白川星歌は意識の中でぐるぐると渦巻くブラックホールに我が身を委ねた。
それは、彼女にとって最悪な一日の終わりのできごと。
夜も遅くに押しかけたアパートの一室で義弟に絡み、くだを巻く星歌。
物語は「はじめてのキッスは異世界のカンペキ王子様とするって決めてるんだ」──そんな一言から始まるのである。
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