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恋の日常
「はぁ……」
短期入院が終わり、いつもの大学生活に戻った私。
語学を学ぶためにこの大学に入った。
でも英語とフランス語を覚えてしまって、正直もう勉強に対する意欲がなくなりつつある。
「ため息つくと幸せ逃げるよ?」
そう言い、講義後いつまでも残っていた私の隣に座る。
友達の橋口鈴だ。
「あぁ、りんちゃん……」
「何、体調悪いの?」
「いや、そういう訳ではないから大丈夫……」
私は言葉とは反対に力なく立ち上がって鈴ちゃんと一緒にそこを出た。
外は春風が吹き、気持ちの良い天気だ。
さっきまでもやもやしていたものも全て吹き飛んでくれそう。
私は息を吸い、そして吐いた。
午後の講義も頑張ろう、そう気持ちを切り替える。
「よし、りんちゃん!食堂行こ!」
腹が減っては戦は出来ぬってね!
今の私はいつにも増して元気で、病弱だなんて誰も思わないだろう。
食堂に着いて、2人で空いていた席に座る。
「いっただきまーす」
私はうどんをすする。
鈴ちゃんの方からはいつまで経っても声が聞こえない。
「りんちゃん?食べないの?」
「……ねぇ、あれって如月色葉じゃない?」
えっ……!?
そう聞いて慌てて鈴ちゃんの向くほうを見る。
でも私の目に映ったのはその人、ではなく、後ろ姿の似ている別人だった。
「違うじゃん、別人だよ。似てるけど」
「そうなんだ、この距離でよくわかったね!そんなに好きだっけ?アイドルとか」
「え?あ、別に好きじゃないよ!目がいいだけ!」
あれ、私なんで隠すの?
素直に会ったって言えばいいものを、私は無意識に避けてしまっていた。
鈴ちゃんには言おうと思っていたのに、その本人は違う話を始めてしまい完全に言うタイミングを失った。
私は彼女の話を聞きながら、お茶を一気に飲み干した。
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