恋の日常

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その夜、私は自分の部屋で立ち尽くしていた。 「今日はどれにしようかなぁ…」 本がびっしり入った本棚の前に立って口を尖らせる。 今日はこれにしようと決めた本は、好きな作家さんのミステリー小説。 少し鼻歌なんかも交ざりながら、でもその世界観に入り込んでしまって結局は読み終わるまで夢中になってしまった。 すごいなぁ、本って…… 少し悩み事があったとしても、案外読み終わるまで思い出さないものだ。 でもやっぱり読み終わったあとには思い出してしまう。如月さんのこと。 また入院中の出来事を頭の中に浮かべそうになった時。 「恋〜、ご飯できたよ〜!」 元気な母の声が聞こえてきた。 「はーい!」 大きな声で返事をして、一戸建ての2階、私の部屋からリビングへと降りる。 晩ご飯の豚カツの匂いとともに、私の目に入ってきたのはテレビだった。 「あ……」 そこに映っていたのは如月さんのグループである“LILY DOLL”のライブの様子。 女の子達の黄色い歓声と、アップテンポな歌が画面から流れてくる。 それを見て改めて彼のすごさに気付き、うちわを持ったファンの子を見て少しいたたまれない気持ちになった。 その続きのニュースはある小説の映画化だった。 「えっ!うそ!?」 そこに映し出された文字は、ほんのついさっきまで読んでいた小説だった。 私もこの情報は把握してなくて、前のめりになって耳を傾ける。 「小説『愛情』がLILY DOLLの如月色葉主演で映画化され、1月に公開されることが決定しました。この小説は――」 「……ええっ!?」 如月色葉主演……?すごい……すごすぎる……! またまた彼のすごさに驚かされる。 この映画は絶対見に行かなければならないと思い、私はまだ春だというのに1月の予定について考えていた。
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