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白馬の王子様?
こんな私でも、つい1ヶ月前までは幸せな婚約者だった。
パカッ!!!!
真「よっちゃん。僕と結婚してください。」
それはまるでテレビで繰り返し見た場面。
こちらはお洒落な高台のレストラン。もちろん夜景付き。
少女の頃は、テレビで典型的なプロポーズの場面に思いを馳せ、幸せそうな綺麗な女性の心情を妄想し幸せな気持ちになったものだ。
それが、今はどうだろう。
「はい。」と即座に答える今の私の冷静な気持ちは。
正直私はプロポーズを受けた嬉しさより、年齢的にもこの辺りで手を打とうと妥協の気持ちが勝っていた。
私は瞬時に頭の中で28才という女への世間体と真との結婚を天秤にかけたのだ。
真の事は普通に好きだった。
真のために手料理を振る舞い、将来この人との子どもが欲しいと思えるくらいに。
だから、見ないフリをした…彼が私に対して向ける笑顔が減っていることを。
太陽が早く沈むようになり、吐く空気が冷たくなった。季節の変わり目には、小さな粉雪を見て感動をしていたのに。なぜいつのまにか積もりはじめた雪に気づけなくなっていたのか。
葉子「ねぇねぇ。雑誌で可愛いカフェ見つけたんだけど、一緒に行ってみない?」
真「ふわぁ…う。ん…もう少し寝てから…ね…」
真の職業は、消防士だ。
一般的な勤務は2日勤務で1日お休み。
人の命を助けるために2時間睡眠なんてざらだ。不満はあったが忙しく働く彼の支えになりたくて、デートの時には彼の好物を作り彼の帰りをずっと待っていた。
「早く結婚したい。」それが真の口癖だった。
真は私の手料理を食べては、「よっちゃんの作る豚汁って美味しいよな。早く結婚して毎日食べたい。」と繰り返した。
公園のベンチで一緒に日向ぼっこをしている時には、幸せそうな家族を見つめ「うわ~!ああいうの憧れるなぁ。僕らも将来あんな風になりたいよね。」と目を細めて眩しそうにしていた。
そんな言動に期待しない女性がこの世に居るだろうか?
私はごく自然に真との結婚生活を夢見ていた。
でも結局、現実は残酷だ。
あんなに私の事を大好きだと、愛していると繰り返した真の言葉はただの戯れ言だった。
そもそも私は彼を好きだった?
誰かと結婚したかっただけ?
今更こんなことを考えてもどうしようもないのにね。結局、子どもの頃何度も夢見た白馬の王子さまなんていない。
あんなものを少女達に見せるから、男性に変な夢を見てしまうのだ。
私は世界中の夢見る少女達に声を大にして言いたい!
白馬の王子さまなんて、いないっ!!!!!
男なんて信頼するなっ!!!!!
そして、私みたいに傷つくなよ…って。
そんなことを思いながら、コンビニの商品出しをしながら、窓越しにぼんやりと落ちては溶けてゆく雪を見つめた。
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