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「仕方ないでしょ、そうなっちゃったんだから!それよりあなた達、明日の休みは早起きしてね!お母さん起こさないわよ!」
「え~っめんどくさっ!」
電話を取れず、機嫌が悪い弟のふて腐れた声。
「だって並ばないと買えないわよ!お一人様ひとつづつなんだからね!辞書」
ググれないから…。
その時、父も叫んだ。
「あっ!俺も並ばなきゃ地図」
ナビが無いから…。
次の日の朝、確か2年前もしたっけ開店前の行列。前はマスク、今度は辞書。
ただ、前は開店待ちの並びの暇さはツイッター、インスタ、ラインで時間を潰せた。
今は何も出来ない。音楽も聞けない。
ただ時が経つのを無言で待っている人々の行列の中にいた。
やっと手に入れた辞書を家に持って帰る途中。私と弟は不思議な光景を目にした。
「姉貴、あの行列なんだ?銀行から人があふれてるよ!」
「はっ?……あぁキャッシュディスペンサーってやつもオンラインじゃん」
「だから何?」
「なんかぁ~通帳と印鑑でお金下ろすんだって。それも3時までだって言ってた。」
「信じらんねぇ~っ!」
全く我が国はどうなっちまったんだ。と昨夜の弟じゃないけど私も思っていた。心なしか道行く人の顔も険しい…。
「姉貴、辞書ってどうやって使うの?」
「知るわけないっしょ!」
私、高校2年。弟、中学2年。家に着いて買って来た辞書を机に置いて見つめていた。
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