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父さんと母さんが出会ったのは高校の時らしい。
お互いに一目惚れってやつで、父さんが思い切って話してみたら気も合うし、一緒にいて楽しかったみたいで、友達としてどんどん仲良くなっていったと言っていた。
もっとも、当時から一目惚れだと自覚していたのは父さんだけで、母さんが気づいたのは何年も経ってかららしい。
自分のことには無頓着だよな、とよく父さんに言われる母さんらしいと思った。
結局、付き合い始めたのはいつだって言ってたかな……。
二十歳を過ぎて、よく一緒に飲みに行くようになってからも母さんは自分の気持ちに気づかなかったし、父さんも下手に心地好い関係を崩したくなくて何も言わなかった。
普段は口数の少ない母さんもお酒が入ると顔を赤くして饒舌になるみたいで、そんな母さんが可愛くてつい飲ませ過ぎた、などと父さんから聞かされた時は流石にどうかと思った。母さんもじとりと父さんを睨んでいたと思う。
二人は本当に仲が良い。別に、過剰な触れあいがあるわけではないけど、お互いを見る視線だとか、普段の会話だとか、そういうことから何となく感じ取れる。正直、僕が恥ずかしい思いをしている。
そんな二人だけど、勿論、僕のことは大事にしてくれていた。一人っ子ということもあって、目一杯愛されているという自覚もある。でも、僕はそんな父さんと母さんに酷いことを言ってしまったんだ。
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