家族

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__俺と澄空が出会ったのは高校の時。お互い友達をつくるのが上手くなくて一人で過ごしていた。だから、余り者同士仲良くやろうぜって俺から声をかけたんだよ。  初めて見たときから好きだったんだ。一目惚れってやつ。  でも、俺も澄空も男だろう? 最近は同性婚って言って、男同士や女同士でも結婚できるようになったけど、あの頃はまだ、男女の恋愛が当たり前のことで、変な奴という印象しか与えなかった。  なんでって顔してるな。理由は簡単だよ。子供が生まれないから。  それこそ今日、陽斗が言われたように、平気で人を傷つける言葉をかけてくる。  一緒に過ごすのが楽しくて、気持ち悪いと思って離れられるのが嫌だったし、何より、俺のせいで澄空までそういう目で見られるかもしれなくて申し訳ない、なんて言い訳をして友人関係を続けていたんだ。  だから、澄空も俺を好きだと言ってくれた時は本当に嬉しくて、舞い上がったよ。それくらい好きなんだ。  周りからどう思われようと関係ないって澄空が言ってくれたから、俺たちは一緒に暮らし始めたんだよ。  俺たちのためにお前を傷つけた。勝手な親でごめんな__  先にご飯を食べてからにしようと言われ、緊張した面持ちでご飯を食べた。味なんて分かりもしない。  食後に父さんがホットミルクを作ってくれて、気持ちが落ち着いたところで正面に座った父さんから切り出された。  子供が生まれないから蔑まれてきたという話を聞いて、自分の存在の矛盾に気づいた。それが顔に出ていたのだろう。母さんが僕の頭を撫でながら真実を話して聞かせた。 __もう気づいてるよな。陽斗の本当の家族は俺たちじゃない。  あれは暖かい春の日だった。俺たちが同居して1年経ったくらいの時、この家の前にお前が置き去りにされていたんだ。  残されていたのは一人分の足あとだけ。どうしてここを選んだのかは分からない。散々、探したけど産みの親のことも分からずじまいだった。  施設に預けることになっていたんだけど、腕の中で気持ち良さそうに眠るのを見て、この子を育てたいって思った。  勿論、悩みもした。男二人でちゃんと育てられるのか不安だったし、今日みたいにお前が揶揄われることもあると思った。海翔と何度も話し合ったよ。  それでも、何があったとしても陽斗を守りたかったし、不自由なく暮らしてほしくて、養子としてお前を迎え入れることにしたんだ。  俺たちの勝手で傷つけてごめん。それから、こんなに良い子に育ってくれてありがとう__
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