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佐々がドアを開けて、鷹也の背を押して、入室を促した。
「さきに入って」
「失礼します」
「お疲れ様、会社の雑務はどう~? 慣れた?」
声の主は、手前にある応接セットのソファに腰かけて、少女と優雅に紅茶を飲んでいた。
丁度ドア側に向いていた九尾は鷹也にすぐ気づいた。
背中を向けている少女はぴくりとも動かなかったが。
豊満な体にぴったりと沿った白いスーツに、真っ白いピンヒールを履いた女性──彼女が九尾だ。
「なんとか」
「そ? それはよかった……って、なにそれ」
機嫌よく振り向いた九尾は、鷹也を見るなり口角を下げた。
そして、ゆるゆると首を振る。
「あなたは私服でもイマイチだったけど、スーツのセンスも微妙ね~」
「……すみません」
リクルートスーツを適当に買っただけだが、そんなに似合わないのだろうか。
自分で見てみてもピンとこない。
首を傾げる鷹也に、九尾は「はぁ~」とこれ見よがしにため息を吐いた。
「顔がいいんだから、何着ても似合いそうなものだけど。佐々ちゃん、鷹也にスーツ見立ててあげて」
「え、そんな、申し訳ないです」
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