02 研究所

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 九尾はカップを置くと立ち上がり、執務机に向かった。  そして、二つのパスカードを手に取り、それぞれを鷹也と少女に差し出した。  受け取ったそれには『坂美野(さかみの)市地域管理官・千代田鷹也』と書かれている。  九尾はクイっと指でふたりに立つように示した。  佐々を含めて三名が一列に並ぶ。 「鷹也くん。この施設は何のための施設か、言ってみて?」 「……超感覚能力者の能力研究及び、福祉向上、管理のための研究施設です」 「そう、広域地域に必ずある国の機密組織っていうのはふたりともお馴染みだと思うから説明はしないわよ」  超感覚能力者──平たく言えば、超能力者。  遥か昔から、千里眼や、予言を行う人は歴史に現れ、多くの人を魅了した。  彼らの能力の真偽は、肯定派にも否定派にも重要視され、様々な検証が行われてきた。  東西冷戦のころから、人間兵器としての彼らの存在を模索する国家の動きがあったとされている。  また、突然変異ともいえるほどの爆発的に能力の伸びた超能力者の存在が、超心理学研究に取り組む学者から複数報告されるようになったのは一九八〇年代だった。
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