02 研究所

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 表向きに存在は否定されたまま、各国は対応に追われた。  その要因のひとつは、能力を用いた事件、事故の顕在化だ。  日本は能力を用いた事件より先行して、事故が多発した。  国民性により各国で能力の発現ケースに特色があるとされている。  日本人の気質ゆえなのか、極限まで溜まったストレスが偶発的な事故となって相手に危害を加えるというケースが報告されたのだ。  警察庁は科学捜査研究所の一部門として超能力研究を開始。  その際に『超感覚能力者』という名称が確立した。  そして、鷹也たちの住む県で唯一の超感覚能力者の研究施設併設の拠点は、この坂美野市郊外にあるこの施設だ。 「そしてあなたたち管理官の職務は?」 「管理官の職「あたしたち管理官は当該地域における確認されていない超感覚能力者──通称『モグリ』の発見、また違法行為に関する捜査権、逮捕権を有する警察官以外の唯一の存在として、広く在野を観察し報告すること」  言葉を遮られて、鷹也は思わず真白を振り向いた。  真白はツンと九尾の顔を見ているだけだ。 「坂美野市広域地域管理官に千代田鷹也、管理官補佐に鈴木真白、そして管理官付き事務官に佐々美穂を任ずる。任命者は坂美野市地域主管所長、九尾 呉羽(くれは)」 「千代田鷹也、拝命します」 「鈴木真白、拝命します」  辞令も証書の類もない、口頭だけの任命式。  九尾はにっこりと笑って、鷹也を見た。 「これからも励みなさい」  それは、呪いの言葉に似ていた。
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